京劇(天津)

京劇は中国の伝統的な歌劇。19世紀に北京を中心に西太后らの庇護を受けながら発展し、国民的な人気を得て1今日に至ります。

私は中国とご縁ができて間もない頃、天津で地元の知人に連れて行ってもらったのを契機にはまってしまい、渡中のたびに劇場に足を運びます。

京劇というとくるくる跳んだり跳ねたりの曲芸がイメージされます2が、実際にはそういう技は散見される程度です。

では京劇の魅力は何かというと、“隈取くっきり化粧された顔” “華麗な衣装” “見栄の切り方などの洗練された動作”等が挙げられます。

ここまでは歌舞伎と共通しますが、京劇最大にして独特の魅力は、その“歌唱”で、「京劇は耳で観ろ」と言うほど。板腔体という基礎旋律をリズム(板式)の速度や変化によって変奏・展開する調べに乗った役者の歌唱は、他に類を聞かない素晴らしさです。

どうしたらそんな声量で、そんな声が出るのか。その非凡さを文字で表すのは不可能なのですが、特に著名な女優3のステージを観る(聴く)と、閉幕して劇場を出てもしばらく鼓膜が震え続けているほどだと言えば、少しは伝わるでしょうか。そしてこの鼓膜の震えがたまらなくになるのです。^^;

私はいつも地元の劇場に連れて行ってもらいます。観客は私以外は全員中国人です4

いい場面、特に歌唱が盛り上がると観客席から“好(ハオ)!”の声が上がります。この歓声にステージの役者も応えて興が乗って、それにまた“好!”が、、、。そんな劇場の一体感と盛り上がりもまた良いのです。

余談ですが、私は京劇が来日したときも国立劇場に観に行きましたが、当然ながら客席から“好!”は上がらず、本来ウケなくてもよいところで笑い声が起こったりとか、超一流の役者たちは今ひとつ乗り切れず精彩を欠き、あまり堪能できませんでした。私がはまった京劇は観客との一体感があってこそで、劇団だけが来てもダメなのだな、と痛感した次第です5

それからこれはせんかたないことですが、天津の劇場では演目が御当地の皆さん向けで、外国人の私でもストーリーを知っている“三国志”や“西遊記”がかかることはありません。

私の間も悪いのでしょうが、優に十回以上劇場に足を運んでいるのに、“三国志”も“西遊記”も“水滸伝”も演ってくれたことがありません。まあ、歌舞伎もいつも“道成寺”や“義経千本桜”を演っている分けではないので、いつか観られると信じて劇場に足を運び続けるしかないのでしょう。

ただ、これが面白いところで、お話が分からなくても、歌唱や演技6を観ているだけで十分楽しめてしまい、全然気になりません。それだけ演芸としてよく出来ている、ということなのでしょう。

京劇の“北京”の“京”なので、中心地も北京です。幸い、私の中国の拠点は天津で、天津は北京の隣7なので、一流の京劇を観るにはもってこい。私を京劇に最初に連れて行ってくれた知人は、今でも私の来訪に合わせてチケットを取ってくれますが、知人はあまり京劇に興味がなく8、いつも申し訳なく思いますが、それでも京劇鑑賞は止められません。

なお、我々は一括して“京劇”と呼んでしまいますが、広い広い中国なので、地方ごとに特徴のある伝統演劇があります。その中で四川省の“川劇”に仮面の早変わりがあって、ぜひ観てみたものだと長年思っていたら、意外なステージで観ることが叶いました。こちらにそのお話を書いていますので、併せてお読みいただければ幸いです。

私が京劇を鑑賞する【天津市】に乗船したのは、下の地図の①です。