三峡下り – その一、川劇変臉 –

変臉(へんれん、仮面の早変わり)が驚異的な中国劇をテレビでご覧になったことのある方は多いことでしょう。あれは中国伝統劇場へ行けばすぐにお目にかかれるものではなく、四川省に伝わる“川劇(せんげき)”に特有の特殊技巧なのです。

私は天津で連れて行ってもらって以来、京劇に代表される中国伝統劇にはまって、渡中のたびに劇場に足を運びます。そしていつかこの“変臉”を観てみたいものだと願っていましたが、どうにも機会に恵まれず・・・。

かねてよりの願いが叶ったのは、思いもよらない“三峡下り”クルーズの船内でした。

長江中流600kmを三日かけて下る船旅の最初の夜のアフターディナーエンターテイメントがそう、川劇だったのです。

幸運とはまさにこのことで、信じ難い気持ちでした。

変臉

目の当たりにした変臉は、それはもう掛値なしに見事なものでした。

下の画像でその素晴らしさが少しでも伝わりますように・・・。。

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面はほんの一瞬で、鮮やかに変わります。次の写真が面が変わる直前と直後です。

大きな袖を持ち上げて、赤い面が一瞬隠れます。

即、手を放して袖が落ちると、もう橙の面に変化しています。

袖を使わずに、手を顔に当てての瞬転も見られました。

船内のホールは劇場に比べて小さいため、本当に間近で観れたのですが、それでも私の目は変臉の妙技に全然ついていけず、“魔法で面が変わったのだよ”と言われたら納得してしまいそうな鮮やかさでした。

変臉とは“瞼譜(隈取=舞台化粧)が変わる”の意とのこと。通常中国伝統劇の役者は面をつけるのではなく舞台化粧をして顔を作っているので、なるほどです。

その技法は公表されておらず、一子相伝の秘伝だとか。

クルーズは始まったばかりでしたが、もうここで下船してもよいと思えるほどの、大満足の変臉舞台でした。

ありがとう、三峡クルーズ。

三峡クルーズ

中国五千年の歴史を育んできた長江を下る船旅は風光明媚の誉れ高く、中国観光の白眉です。

内陸部工業化中核都市の重慶から三峡ダムのある宜昌まで、およそ600kmの船旅です。私が参加したのは二泊三日の行程でした。 1

これが乗船した五つ星のBOAT KING。ご覧のとおり立派なクルーズ船で、橋やビルとの対比で巨さがお分かりになることと思います。

一枚目の夜景は重慶のクルーズターミナル。

二枚目以降は船内で、ホールも客室もレストランもゆとりがあり快適で、ジムに売店、さらには床屋まであって驚かされました。

甲板も広々していて、ここから三峡の雄大な景色を鑑賞します。

三峡下り(その二)はクルーズ最初の観光地、“豊都鬼城”をご案内します。