乞食鶏(蘇州王四酒家)

本文は2009年の筆者の見聞に基づき書かれたものです。

中国滞在の楽しみの一つが中華料理であることは論を俟たないことと思います。

しかし実に残念なことに、料理、特に味というものは、なかなか記憶に留めて置き難い、儚いもの。

そんな中にあっても強く印象に残るのは、料理が皿に乗るまでの過程がユニークなものです。

そんな過程がユニークな料理の代表格が、テレビや動画の面白中華料理紹介でよく取り上げられる、泥の固まりを木槌で叩き割ると中から蒸し鶏が出てくるアレ、【乞食鶏】です。

乞食鶏

乞食鶏とは、鶏を蓮の葉と泥で包みそのまま蒸し焼きにする中国江蘇省の伝統料理で、中国語では叫化鶏1と言います。

インパクトある名前は、鶏を手に入れたものの鍋を持たない乞食が、焼き芋にヒントを得て鶏を地面に埋めてその上で焚火をしたところ、実に美味しく蒸しあがった、という由来談より付けられたとか2

この乞食鶏の名店が江蘇省の蘇州市にあり、当地を友人と訪れた際に是非行ってみようと出かけました。

王四酒家

19世紀末開店の蘇州を代表する名店で、乞食鶏はこの店で料理として確立したそうです。

繁華街の目抜き通りに看板3を探して入店し、メニューを開くや乞食鶏を見つけて給仕に注文。しばし待つと、大きな泥の固まりと木槌を乗せたトレイがガラガラとやってきました!

叫化鶏
トレイの上に泥の塊と木槌。共に本当に大きい。
乞食鶏
木槌で泥の塊をガツンガツンと叩く!
乞食鶏
中から蓮の葉の包が現れました。
乞食鶏
ハサミで蓮の葉を切って包を開けると
乞食鶏
美味しそうに丸っと蒸された鶏がでてきました!
乞食鶏
蓮葉ごとお皿に乗せたかと思うと
乞食鶏
蓮の葉は豪快にトレイに落とされました ^^;
乞食鶏
机に置かれたお皿を給仕さんがほぐしてくれて
乞食鶏
さあ召し上がれ!
王四酒家
もう一つの蘇州名物料理【松鼠鱖魚】と中華料理定番の【東坡肉】も頼みました。

乞食鶏は中国の各地(特に華南)で食べられて、日本でも出すお店が散見されます。それでもご当地で食べる名物料理は格別で、ましてやそれが発祥のお店でとなれば感慨はひとしおです。

友人と二人でいい歳してキャッキャッ言いながら盛り上がったのが、まるで昨日のことのように温かく心に残っています。

他にユニークで印象的だった料理といえば

鉄鍋炖(瀋陽)

テーブルの真ん中に巨大な鉄鍋が組み込まれている、豪快な東北地方冬定番の鍋料理。

鍋に具材4を入れてぐらぐら煮立ってくると、給仕のお兄さんが黄色い饅頭をたくさん持ってきて“へえ、饅頭も入れるんだ”と見ていたら、お兄さんがやおら饅頭を平たく潰して鍋縁にぺたぺた貼っていくからびっくり!

饅頭はトウモロコシ粉の生地で、 煮込みの湯気で蒸し焼きになったところを剥がして食べるのでした。

瀋陽で、地元出身の友人夫妻にご馳走になりました。

酸菜白肉鍋(斉斉哈爾)

乳酸発酵した白菜の漬物「酸菜」(上の写真の黄色いのがそう)と豚肉を煮た中国東北地方の代表的な冬の鍋料理。

白菜の爽やかな酸味と旨味が豚の脂とが絶妙のハーモニーを奏でます。

この鍋は東京のさる中華料理店で出会い、とても気に入って毎冬 食べていました。

そんな好物を遥かなる本場5で本物を食べられて感動しました。

手作り焼売(瀋陽)

瀋陽北駅で昼食にブラッと入った駅前のお店で、何の気なしに焼売を頼んだら

出てきたの焼売は手作りのものでした。

ホロッと緩い具が極薄の皮で柔らかく包まれていて、底には小籠包のような熱々の出汁がたっぷり。

焼売は好物で崎陽軒のものをはじめ、よく日本で食べますが、振り返ると手作りのものを口にしたことことはなく、それは似たかたちをしたまるで別物のようで驚かされました。

食べた感じがなんとも軽く、いくらでも食べれて追加注文したことは言うまでもありません。

それにしても美味なので後で調べたら、それもそのはず、ブラッと入ったお店は実は1796年創業の老舗でした。

老奉天马家烧麦、瀋陽北駅北口出て右手すぐです。瀋陽に行かれた際にはぜひ。

蒸し魚(天津)

これは料理の過程ではなく、料理そのものの印象が焼き付いているものです。

北京の港湾と言える天津は美食で有名で、わざわざ天津から食事をしに来るほどだそうですが

その天津で出され蒸し魚が実に身がホクホクと柔らかくて美味しく、私のお気に入りです。

考えてみると、こと魚料理に関しては日本も中国に負けないくらい多様に美味しく調理しますが、不思議と魚を“蒸す”ことは少ないかと。日本の魚も蒸せば美味しいのはたくさんありそうなのい、どうしてなのでしょうか。

私が乞食鶏を賞味した【蘇州】の所在は、下の地図の⑧です。